INDEX■
GUNDAM-00■


5話まで

西暦、2307年
3本の軌道エレベーターを中心とする太陽光発電システムの完成によって
人類は半永久的なエネルギー供給を手に入れた
しかし、それでも人類は争いをやめることはなく
各国家群はおのれの威信と繁栄のためおおいなるゼロサム・ゲームをつづけていた
そんな世界に対して、戦争根絶を目的とする私設武装組織
『ソレスタルビーイング』が行動を開始する
モラリア共和国への武力介入を行った4機のガンダム
その戦場で、刹那・F・セイエイは運命の男と対峙する

男の名は、サーシェス
アリー・アル・サーシェス





・さあ! ついに! みなさん待望の、待ちに待った、夢にまで視たあの男が
 予想より5話も速く再登場ですよ? なんじゃそりゃー!!
 └いやさすがに夢にまでは視てねえよ? ねえけどな?
  └しかも予想をうわまわるすばらしい扱いのよさでしたね!
   └いやそ……うん、そうだな

・今回書くのにすごい苦労してましたね管理人
 └つまんなかったわけじゃないけどなんかいじるところがなかったんだそうな
  └なぜいじれなかったのかを分析してネタにすればいいじゃないですか
   いつもの分析癖で
   └タンにネタがデナカッタからじゃナイノー?
    └なんにせよ、今回はギャグやパロディひかえめでお送りします



「ったくひでえもんだな、ソレスタルなんたらってのはよおー
 戦争を止められりゃ下々のものはどうなってもいいらしいや」
 ここは南アの鉱物資源採掘現場でこないだロックオンが狙い撃った残骸の山
 ヒゲの強そうなひと、アリー・アル・サーシェスが文句を言っていた
 鉱物が採れなくなれば国は経済破綻し、他国もその影響を受ける
 会話からしてヒゲたちは傭兵であり、影響を受けたくちのようだ
 PMCトラストからの連絡にヒゲは笑みを浮かべる
「ようやく重い腰をあげやがった、AEUのおえらいさんがたがな!」

 AEU中央議会では各国代表がそれぞれの都合を口にしつつ
 PMC存続のために他国へ軍を派遣する算段を進めていた
「われわれは、モラリアを救う白馬の騎士となるのだ」
 白馬の騎士ときやがった

 トリノヨゥオーニー マブシサマーデーインスペェース(こう聴こえてた)

○6.セブンソード

 航行中のプトレマイオスでは、アレルヤが前回の救助活動の件で
 1週間以上独房に入れられていた。そこへティエリアがやってくる
「とても反省をしているとは思えないな」
「そうだね。キュリオスから降ろす気かい?」
「そうだ。と言いたいところだが、そういうわけにもいかなくなった」
 モラリア共和国でのハードなミッションが開始されるというのだ

 人革連、超人機関技術研究室で
 アレルヤとの共振により前回暴れたソーマは徹底的に調べられていた
「かのじょの脳に外部から影響を与えられた可能性があります」
 それはつまり超兵に同類がいるかもしれないということ
 ふつうに考えたらガンダムマイスターがそうなのだという推測が立ちそうだが
 とりあえずスーツに脳量子波を遮断する処置をほどこすことで対応した
 なんだ超人機関ちゃんと仕事してるじゃん
 しかしセルゲイは、そこまでしてソーマを戦わせようとすることに難色を示す
 おれたち大人の男がそんなに役立たずかよとか思ったわけでもないだろうけど

 太陽光発電導入のための、マリナ王女の技術援助嘆願旅行はつづいていた
 しかしAEUは軌道エレベーター完全稼動のために人材を割かれているのである
 食糧支援の続行をとりつけるのでやっとだった
「われわれとしても、ほどこしをする余裕はない……それもモラリアしだいか」

 さて、クロスロード家とセイエイ宅はおとなりさんである
 おとなりさんといえばつくりすぎた食事をおすそ分けするのだ、と
 お約束を活用して親睦を図るサジくん
 しかし刹那はちょうど出かけるところであった
 だがただのすれちがいではなく、立ちどまり『……災難だったな』と告げる刹那
 かれにとっても憎まれるべきソレスタルビーイングが感謝されていることは
 イレギュラーであるようだった

 さて、今回なにかと話題のモラリア共和国は欧州南部にある小国
 民間企業の2割を占めるのが、総合軍事企業であるPMCトラストだ
 かれらは世界の戦争が縮小するまえに
 AEUの支援を受けてソレスタルビーイングに対して打って出るつもりだ
「それに、あわよくば手に入れようと考えているんじゃないかな……ガンダムを」
「フッ、なら今回は譲るしかないようだな。AEUのエースとやらに」

「イィーヤッホォーウ!!」
 さあみなさんお待ちかねのこんにゃろ登場です
「よお! AEUのエース、パトリック・コーラサワーだ!
 早く来いよガンダム! ギッタギッタにしてやっからよ!」

 130機を超えるMSを相手どる最大規模のミッションをまえにして
 買いものに出かけるオペレーター2名
「わたしたちが活躍すればするほど物価が上がるんだから
 いまのうちに欲しいもの買っておかなきゃ!」
 HAHAHAナイスソレスタルジョーク
「データの解析が……検証が……」
「いいからいいから!」
 クリスティナ・シエラは仕事中のフェルト・グレイスを拉致っていった

「プレゼント! プレゼント!」
 ハロがムダにしゃべってるとおり
 刹那とロックオンへ届けられたガンダムの新装備、GNシールドとGNブレイド
 刹那のそっけない反応に対して、メカニックのおっさん(イアン・バスティ)は
 いかにもはりあいがなさそうに文句を言った
「すこしは感謝ってものをだなあ……」
「じゅうぶん感謝してるよ、おやっさん。刹那はエクシアにどっぷりだからなあ」
 ロックオンがとりなす。でもガンダムに夢中なのはまちがいないが
 感謝はしてないかもしれない気がする
 そして宇宙からアレルヤとティエリアも合流してきた
「来たか……!」

 飲みに行った先でスメラギさんはユニオンのビリー・カタギリと語らう
 ふたりは旧知の仲であるようで、これも偶然の出会いではないようだった
 おたがいただの雑談ではなく、ガンダムや世界の動向をどう観ているかが関心事
「あのことは……」
「もう、忘れたわ」
「そう……ならいいんだ、こうしてまた会えて、うれしいよ」

 翌朝
 合同演習の名目でモラリアへ集結したAEU、そしてヒゲことアリーは
「……AEUの新型か。こいつでガンダムを倒せと?」
「鹵獲しろ」
「ふん、言うにこと欠いて……」
「一生遊んで暮らせる額を用意してある」
 カスタマイズされたイナクトを与えられたアリーが
 うれしそうに笑ったのは、はたして魅力的な報酬をちらつかされたからだろうか

 ソレスタルビーイングも敵の配置状況をリアルタイムで把握していた
 遊んでばかりいると思われたクリスティナはちゃんと仕事していた
 さすがに尋常ならざる技術の持ち主たちである

 エイフマン教授はビリーが『クジョウ』と会った、と聞き
「あの事件のことは?」
 とビリーに訊ねる
「忘れた……と言っていました」
 クジョウ。スメラギの本名だろうか
 そして横で話を聞いていたグラハムもその名を知っていた、有名人のようだ
 ていうか戦場予報士っていう職がほんとにあるのかよ! ただの異名でしょうか

 そしていよいよガンダムのミッション開始
 今回はみんなわりとロックオンの命令に従っているようだ
 アレルヤの件が効いていたのだろうか

 世界じゅう(サジくんとか)が見守るなかで
 迎え撃つ敵機を今週も蹴散らかしていくガンダムたち
 コーラサワーくんもヴァーチェが地上を掃討しているスキを狙ったが
 肩のキャノン砲を初披露されてあっさり追い払われていった
 エクシアもセブンソードを使いこなし敵を両断していく
(いつもの装備でやってることとあんまり変わらない気もするが)
 そこに現れる青黒いイナクト、エクシアの回避運動を予測し命中弾を与えてくる
「動きが……読まれている!?」
「はっはっはっは! 機体はよくてもパイロットはいまいちのようだなあ
 商売のジャマばっかしやがってえ!」
「あの声……ま、まさか!」
 ゲリラ時代のことを思いだし、愕然とする刹那
 その茫然自失をよそに、イナクトのパイロット、アリーは叫ぶ
「こちとらボーナスがかかってんだ。いただくぜえ、ガンダム!」

6.セブンソード Closed




○キャラクター
●パトリック・コーラサワー
「おまえもガンダムなんだろ? なら……おれの敵に決まってるだろうがあ!」
・ははあ、さっそくセブンソードの試し斬りのえじきにでもなるわけだな
 とか思ってたらあれだ
 └最終的にはガンダム全員にやられてもらいたい
・しかし相当の広域レンジを誇るであろうヴァーチェの一撃をだよ
 とりあえずほぼ無傷(のようにも見える)で回避したのはエースならでは
 といえるのではないのかな
 └だからヘタレキャラってそういうもんだろ。実力はあるんだよ
・次回もおたのしみにの映像にまで登場。スタッフもよくわかっているようだ
●刹那・F・セイエイ
「エクシア……おれのガンダム」
・さあ過去がいろいろ明かされはじめる予感がするよ
 └ぜひ出生までさかのぼっていってさまざまな驚きをもたらしてほしいです
  あの無国籍ネームで幼少から中東で戦ってるんですから
  ただのゲリラじゃないんでしょうし
  └と思ったらけっきょくマイスターネームでした!
・サジくんとは無愛想なりにコミュニケーションを試みているのがおもしろいな
 └でもあれじゃ相手はなんだかわからないよ
●アリー・アル・サーシェス
「ヒュウ♪ そいつぁ……おおいに魅力的だな」
・すみません、予告の時点では
 このひとがセブンソードつくった技術者かと思ってました
●ロックオン・ストラトス、ハロ
「狙い撃つまでもねえ!」
「マカサレテ! マカサレテ!」
・もうこのひとの戦闘シーンのBGMは山本リンダでいいと思う
 └やだよそんなおおきく振りかぶっては
・ハロもSEEDのに負けじとカイ・シデンを引用するとはな
●アレルヤ・ハプティズム、ティエリア・アーデ
「まったく、スメラギさんの予測は……!」
「きみはガンダムマイスターにふさわしくない」
・今後ソーマくんとからんできそうなアレルヤと
 任務のないあいだはひまつぶしにほかのマイスターに文句を言うティエリア
 └なんかドラマの前フリばっかりだな
●マリナ・イスマイール、シーリン・バフティヤール
「ここでも、ソレスタルビーイング……」
・いつストーリーに関わってくるんでしょうか貧乏王女
●グラハム・エーカー
「ソレスタルビーイング……本気とみた」
・また『とみた』ってゆった
 └もう富田さんって呼びましょうよ、とか言うなよ
  └くっ!
●ビリー・カタギリ
・大学院以来なのに開口一番『やはり気になるかい?』ってどうなんだろう
 └でもこの会話じたいスメラギのセッティングみたいだから
  もしかしたら多少は察してるんじゃないのかな
●王留美、アレハンドロ・コーナー
「最大規模のミッション……
 世界は、ソレスタルビーイングを注視せざるをえなくなる」
「聞こえるようだよ。世界じゅうの悪意が」
・今週もいつもとおなじようなこと言っただけに終わった
 リューミンの衣装はまた変わってたけど
●スメラギ・李・ノリエガ
「さ! 飲も飲も」
・本名はクジョウスメラギですか
 とてもヘン……変わった名前ですね……いまさらですが
●フェルト・グレイス、クリスティナ・シエラ
「いつのまにハックを?」
「朝食のまえに」
・今回いちばん目立っていたのはこのオペレーターコンビ
 └萌え的に?
  └すぐ萌えとか言わないの
   ともかくサブキャラクターに生活くさい描写が出ると目を引くね
●セルゲイ・スミルノフ、ソーマ・ピーリス
「……なにかにつけて、それか……!」
・セルゲイさんはしかし独力でガンダムをどうにかできると思ってるんだろうか
●沙慈・クロスロード、ルイス・ハレヴィ
・今回ルイスのセリフ「え?」だけ
○メカニック
●ガンダムエクシア
・ガンダムセブンソードなんて開発コードだったのか
 ├ヘブンズソードとまぎらわしい気もします
 └ほかのガンダムがどんな痛ましいコードをつけられてたのか気になるな
  └痛ましいとか言うなよ!
●ガンダムデュナメス
・GNシールド(勝手に命名)は
 マスターガンダムやデスサイズのアクティブクロークを彷彿とさせるね
 └銃を出したらあまり防げてないみたいだが……
●ガンダムキュリオス
・追加装備コンテナにはいろんなタイプがあるようだ
●ガンダムヴァーチェ
・ほんとにもったいぶるなあこいつは
 やっと肩のキャノンを使っただけだ
●イナクト
・なにこのコーラ機とアリー機の動きの差
○総評
・くりかえしになるけど、なんかトピックに欠けるお話だったね
 つまんないわけじゃないんだよ? つまんなくてもいいけど
 └コーラサワーが再登場するぐらいじゃどうにもならなかったな

●次回予告
 義によって動くのが人間であるなら利によって動くのもまた人間である
 つかのまの勝利、その果てにある絶望
 次回『報われぬ魂』
 ガンダムの真価が問われる

 ・アリーさん生か死か!? やっぱり死んじゃうかなあ
 ・ロックオンが刹那を殴ったみたいですが、その理由やいかに!?



・すごい量になってしまったのでさすがにちょっと削りました
 └ていうかガンダムマイスターはきっと全員偽名だって
  当初から言ってたのおまえだろ? なに忘れてんだ
  └くっ……! 狙い撃ってしまいたい……!




 2299年、クルジス共和国
「きみたちがその身を神に捧げ、この聖戦に参加するために
 やらなくてはならないことがある。それは……」
 それはガンダムに救われるさらに以前の刹那の記憶
 あどけない刹那が男のそのことばに従って射殺したのは、おそらく──
 そして同様に『家族』を殺め幽鬼のごとく男のもとに集まったのは
 いずれも刹那と同様に幼い子どもたちだった
「おめでとう。これできみたちは神に認められ
 聖戦に参加することを許された戦士となった!」
 忘れもしない男の声
 そして現在、青黒いイナクトから聴こえた声は、まぎれもなく
「ま、まさか! そんな!」
「いただくぜえ、ガンダム!」
 なんかアリーさんふつうに極悪人みたいじゃないですか

 ムスウノォーヤーミーヲコーエー

○7.報われぬ魂

「無傷で手に入れようなんて思っちゃいねえ!
 リニアが効かねえなら、斬り刻むまでよ!」
 イナクト、目標を斬り刻む! とか言いそうなぐらいの勢いで
 ビームサーベル二刀流のエクシアにも臆すことなく
「ちょいさあ!」
 超振動剣を手に飛びかかってくるサーシェスさん
 飛行能力を活用して三次元的に立ちまわり
 2本のサーベルをたやすく叩き落としていく
「この動き……!」
 パイロットとしては相手に一日の長があるようだ

 刹那は文字どおり伝家の宝刀、GNブレイドを抜刀
「何本持ってやがんだ」
 まったく、なんでもかんでもくっついてやがる……
 サーシェスは敵ガンダムの性能に頼った戦いぶりに言い知れぬ怒りを感じた
 そのうちGで奥歯とか砕いたりするかもしれない
「けどなあ! 動きが……見えんだよっ!!」
 その一刀々々が刹那の記憶を鮮明にしていく
 サーシェスにナイフ格闘の手ほどきを受けていた記憶、そして
『やめて……ソラン……! なぜ! どうして──』
 幼い日のじぶんがひきがねを引く瞬間、目のまえにいた『その女性』が
 口にした名を刹那は思いだし
「うううううううあああああ!」
 エクシアの胸のGNスフィア(いま命名した)が
 刹那の叫びに呼応するかのように輝きを増し
 振動剣と切り結んでいたGNブレイドが咆哮する
 剣のまとうGN粒子が密度を上げたか、イナクトの振動剣を両断した
 あまりの性能にさすがのサーシェスも驚く
「なんて切れ味だ!」
「宇宙で鍛えられたこのGNソードに……
 斬れぬものなど、あんまりない!」
 そして間合いを開いたイナクトに対し、刹那は光信号による通信を試みる
 サーシェスは目を疑った
「『コクピットから出てこい』だと……!? 気でも狂ってんのか!」
 だが刹那は先にハッチを開き、姿を現す
 ヘルメットは脱がないままではあったが
「あの身体つき……どう見てもガキじゃねえか!
 おもしれえなあ、おもしれえぞ、ソレスタルなんたら!」
 その『おもしろさ』に応えるようにコクピットから出
 ヘルメットを脱いでみせるサーシェス
 その顔は記憶のままだった。刹那の疑惑は確信に変化し、拳銃を向ける
 だがサーシェスは動揺するふうもなく、すかさずじぶんも銃を抜き
「なんだよ!? わざわざ呼びだしといてこれか! ツラぐらい拝ませろよ!」

「……!? なんだ!? だれだか知らないが」
 人革連のセルゲイ・スミルノフは超人的な直感力でその声を聴き
 なにかを確認するように頭を触りながら言った
「拝ませるヅラなんぞ、もとよりないわ!」
 直感の集音性が悪かった
 なおかれのこの能力はストーリー展開にはまったく関係がない

 双方がトリガーをしぼろうとした瞬間、駆け抜けた銃声は
 しかしデュナメスのスナイパーライフルのものだった
「ハズレタ! ハズレタ!」
「はずしたんだよ! 当てりゃ刹那もまきぞえだ……ったく!」
 ロックオンが言いわけに気をとられているあいだにイナクトは飛びすさる
「離れた! 狙い撃つぜ!」
 いやもうどうあっても毎週言わなきゃいけないんですかそれ
 けっきょくサーシェスは狙撃をかわして遁走
 トラブルのためにスメラギさんが大幅にプランを刷新する羽目になった
 エースを欠いた敵をまえにして、以降はガンダムたちの独壇場であった
 だが約一名いらだっているマイスターがいた、もうおわかりですね
「ティエリア、刹那がまたやらかしたらしい」
「だまっていろ。ひとと話す気分じゃない……!」

 2時間経たずに半数のMSを倒し、いったん姿を消したガンダムたち
 そしてAEUは打撃を受けたモラリア取りこみに動く
 今回の合同演習は、はじめからこれが狙いだったのだ
 ソレスタルビーイングはまたしても利用されたことになる
「せめて黙祷を捧げよう……われわれの偉大な兵士たちのために」
 そしてPMCのトップも頭を抱えていた
「これは断じて戦争などではない……圧倒的な蹂躙ではないか!」
 各国が思惑をめぐらせているのをよそに
 ガンダムたちはラストフェイズに移行、渓谷を縫うように進んでいた
 目標はモラリア軍司令部、直接敵のアタマをつぶそうというのだ
 移動中、ティエリアに脅迫されたりしながらも刹那は
 アリー・アル・サーシェスについて考えていた。やつがなぜモラリアに?
 食いつめて戦場を求め、PMCに落ちついたというのか
「だとしたら……やつの神はどこにいる……?」

「……!? なんだ!? さっきから」
 人革連のセルゲイ・スミルノフは超人的な直感力でその声を聴き
 なにかを確認するように頭を触りながら言った
「おれの髪はここだ! どこにも行っていない! 行きようもないし!」
 すごい能力だがやはりストーリー展開にはまったく関係がない

 サーシェスは温存していた部下と合流
「いやあしかしさすが隊長です。おれらは指示どおり隠れてて正解でしたぜ」
「命あってのものだねってな」
(あの剣さばき……まさかクルジスのときの? ……考えすぎか)
 どうやらかれも、刹那のことをおぼろげに記憶していたようだ

 さて今週2回めの大暴れ
「ヴァーチェ、目標を破砕する」
「デュナメス、目標を狙い撃つ!」
「キュリオス、介入行動に入る」
「エクシア、目標を駆逐する」
 司令部に現れたガンダムたちは5分とかけずにヘリオンを全滅させた
「これは夢か……!?」
 司令官はモラリア首相の指示により、無条件降伏信号を放つ
 それで終わりだった
 制圧するでも占領するわけでもなく、こうしてガンダムのミッションは終了した

 ユニオン、対ガンダム部隊の3人は今回の戦いについて見解を述べていた
 ユニオンにおけるタリビアのときと同様
 この戦いはAEUの連帯を強め、軍備の増強を後押しする結果に終わった
 まるで全世界を戦争当事国として自覚させ、強化していくかのような行為
 ソレスタルビーイングにとって不利な状況に世界は動いていく

 非常事態宣言からたった5時間での終戦、じつに前代未聞であった
「サジ、わたしたち、ソレスタルビーイングに助けられたのよね……?」
「ああ。そうだよ……そうだけど……」
 学食で呆然とTV放送を観ているサジとルイス
 スメラギの目算どおり、一般人をふくめ500名以上の犠牲者を出した
 ガンダムたちの戦いに、ふたりは当惑するしかなかった
 声明もなく、なにを要求するでもないソレスタルビーイング
 かれらは言いたいことをはじめにすべて言っており
 それ以上なにひとつつけ加える必要などなかったのだ

 いつもの無人島でロックオンにぶん殴られた刹那くん
「なぜ敵に姿をさらした? 理由ぐらい言えって!」
 それでもなにも答えない刹那に
 ティエリアはとうとう拳銃を向ける
「言いたくないなら言わなくていい。きみは危険な存在だ」
「おれは降りない。エクシアからは降りない」
 そう断言し、刹那も拳銃を抜きかえす
 ロックオン、アレルヤのふたりが刹那をかばう
 ふたりもひとまず銃をおろし、ティエリアがあらためて問う
「……ならば、見せてもらいたいな。きみがマイスターである理由を」
(たぶん『おれがガンダムだからだ』って答えたら撃たれるだろうな)
 刹那くん意外に空気読める子
 刹那は立ちあがり、かれなりに慎重に、だが毅然として答えた
「おれの存在そのものが理由だ」
「パードン?」
「おれは生きている……生きているんだ……!」
 場の空気が凍りつく。だれも意味がわからず全員フリーズしていた
 刹那は絶望的に口ベタなのだった

 スメラギに届いた報せは、予報士にとっても望まない、しかし
 流れとして必然ともいうべき事態だった
「やはり、起きてしまうのね……これが、悪意に満ちた世界」
 はたして、その悪意とは?

 平和そのものといった経済特区東京の風景
 街を歩きながらサジとルイスがどこに遊びに行くか話していると
 だしぬけにふたりを襲う閃光、轟音、そして衝撃
 数十メートルと離れていない路上で、大爆発が起こったのだ
 なんてついてないカップル。滅んでしまえなんて言って悪かった
「バスが爆発したぞお!!」
「テロや! これはテロやで!」
 不謹慎ながらある早口言葉が浮かんでちょっと笑いそうになりました
 たぶん視聴者の心がけっこうひとつになった瞬間だったと思う
「テロって……そんな……!」
 愕然とするルイスを連れ、その場を離れるサジ。無事でよかったですね

 事態はマイスターたちにもすぐに伝えられた
 世界の主要都市7箇所における同時多発テロ
 駅や商業施設、一般人の集まるところを狙っての犯行
「100人以上の人間が命を落としたそうだ」
「なんてことだ……!」
 王留美からの通信で詳細が告げられる
「実行犯から、たったいまネットワークを通じて犯行声明文が公開されました
 ソレスタルビーイングが武力介入を中止し、武装解除を行わないかぎり
 今後も世界じゅうに無差別報復を行っていくと言っています」
「やはり目的はわれわれか」
 敵の正体はまだ不明。マイスターには待機の支持がくだされる
「どこのどいつかわからねえが、やってくれるじゃねえか!」
「無差別殺人による脅迫……」
 色めきたつ一行
 だがティエリアだけは余裕を崩さない
「ふん、そんなことで、われわれが武力介入をやめると思っているのか?
 このような事態が起こることも、計画のなかには予測されているはずだ」
「きさま!」
 あまりに冷淡なティエリアの言いぐさに、ロックオンがつかみかかる
「どうしたんですか? いつも飄々としているあなたらしくない態度ですね
 そんなにテロが憎いのですか? 過去をにおわせる伏線ですか?」
「悪いか?」
「世界から見れば、われわれもりっぱなテロリストだ」
「このへんでおれも目立ちたい。伏線張って悪いか!!」
 そっちかよ

「その組織は、テロという紛争を起こした」
 ティエリアとはべつの意味で、迷いも動揺もなくそれを口にしたのは
 われらが主人公、刹那くんである
「ならば、その紛争に武力で介入するのが、ソレスタルビーイング
 行動するのは、おれたち……ガンダムマイスターだ」

 ってちょっとお、だぁれを駆逐するのかわかってないのに
 刹那くんはいったいいどうーするつもりなんでしょうかー
 てなわけでえ、次ぃ回は無差別テロと戦いまっすぅー!
(ナレーション:若本規夫)

7.報われぬ魂 Closed




○キャラクター
●刹那・F・セイエイ
「……! うううううううあああああ!」
・ここまで感情的になったのってはじめてかな?
 └しかしちいさいころから無口無表情なんだねえ
●アリー・アル・サーシェス
「ボーナスを獲り逃しちまったぜ……!」
・かけ声の「ちょいさあ!」が『チョリソー!』って聴こえまして
 └それはさすがにおまえだけだよ。ああハラ減ってきた
・いやあ、なかなか外道でしたね。笑顔も邪悪でした
 しゃべるときのポーズもヘンだし微妙におもしろかっこいい悪党キャラです
 もしかしたら裏があるのかもしれないけれど
 └かんたんに死ななくてよかったな
●ロックオン・ストラトス、ハロ
「悪いか……? テロが憎くて悪いか!」
「ミンナ、ナカヨク! ナカヨク! アーッ」
・狙い撃つ男は今週もみんなのとりもち役
 └あんまりリーダーだと思ってもらえてないようだけど
  このひとがいなかったらどうなっていたことでしょうか
・波にさらわれそうになったハロもかわいかったが
 ロックオン以外ノーリアクションなのも最高だったぞ
●アレルヤ・ハプティズム
「どんまい☆」
・ハレルヤ……やっぱりこのひとときどきおもしろいよ
『命令違反したぼくが言うのもなんだけど』とか
 └こいつに『またやらかした』とか言われる刹那って問題児すぎだよな……
・先導していたのはモラリアの地理に明るかったからなのかな
 もとPMCだったとか
●ティエリア・アーデ
「こんどまた愚かな独断行動をとるようなら、きみをうしろから撃つ」
・イオリアおじいちゃんのクローン説が有力なメガネくんですが
 いまのところ過激な正論が目立ちます
 すこしは軟化していくのか、それともどんどんやばいほうに行っちゃうのか
 └そのへんの動向ふくめて
  ガンダムWで張五飛が好きだったファンはこいつも気に入りそうだな
●グラハム・エーカー、ビリー・カタギリ、レイフ・エイフマン
「プロフェッサーは、かれらが滅びの道を歩んでいるとお考えですか」
「まるで、それを求めているかのような行動じゃ
 すくなくともわしにはそう見える」
・ライバル、解説しかしてないよ
 ├まったく、つぎにまみえるのはいつの日か
 └今週は、おもしろいセリフまわしひとつなかったぞ……
●セルゲイ・スミルノフ
「これ以上、兵をムダにするな。降伏しろ」
・モニターを見つめる背中がなにやら哀愁漂ってました
●王留美
「ヴェーダの推測どおりに計画が推移しているのは、事実でしてよ」
・今週は先週とおなじ服だった
 └おなじ作戦のシーンなんだからあたりまえだ
・それにしても地味にあわただしそうなポジションですよね
●スメラギ・李・ノリエガ
「あの子のせいで戦闘プランがぐちゃぐちゃよ!」
・おなじドレスのはずなのに、なんだか先週よりすごい胸だったね
 └いろいろセリフもあっただろ、胸ばっかり気にしてんじゃねえよ
  └ムリ言っちゃいけないよ
●アレハンドロ・コーナー、アムロ(仮名)
「これで、世界はどう動くか」
「おめでとうございます。アレハンドロ・コーナーさま」
・毎週々々、こいつらなんかすげえ黒幕っぽいんだけど
 └ソレスタルビーイング分裂の伏線なのか……
・ええ!? 古谷徹ナレーションしかしないんじゃなかったのか!?
●沙慈・クロスロード、ルイス・ハレヴィ
「まずはー、洋服を見て、洋服を見て、洋服を見て、洋服を見る!」
・すごい災害遭遇体質
・リューミンは衣装持ちなのにルイスはなぜいつもおなじ服なんだ
 └買いものじゃなくて『見る』だけなのかな
  └いやおなじタイプの服を買い集めてるんだきっと。オバQ派だよ
●絹江・クロスロード
「戦争が……終わった……!?」
・めちゃめちゃ忙しそうね、ガンダム出現以来休みがなさそうなくらい
 └たった5時間で終わる戦争なんてなあ。とてつもなさすぎる
○メカニック
●ガンダムエクシア
・セブンソードってぜんぶ同時に使う戦法とかないのか
 └これから奇想天外な殺陣が出てくることに期待しましょう
●ガンダムデュナメス
・粒子を調節して敵パイロットだけを狙い撃つぐらいできそうなもんだ
 └強すぎるだけに、手かげんもむずかしいんじゃないのかね
●ガンダムキュリオス
・真上からの射撃で脳天串刺し。ありそうでなかった戦法です
●ガンダムヴァーチェ
・このうえプライマルアーマー(仮称)まで使えるなんて!
 └ますます最強になってきた。ティエリアひとりでミッションこなせそうだ
  あの自信もまったく無根拠なものじゃないな
  └消耗も激しそうだけどな。ふつうの数の敵ならじゅうぶんだろうな
・ガンダムってGN粒子出力機としての意味あいが強いんですね
 └圧縮率も調節して自由な方向に展開できて、攻防一体。多目的すぎだよな粒子
●イナクト
・性能をフルに発揮すればここまでの動きが可能なのがイナクトなのである
 みんな、とくにコーラサワーくんはよく見ておくようにー(教室内爆笑)
 └ひどいいじめだ先生
●ヘリオン
・ティエレンよりは動きまわれそうなのになんて的っぷりなんだ
 └なんか戦闘中とっさに変形するのは不可能みたいだよ
  └じゃあ装甲の弱いぶん、陸戦じゃさらに不利ですね……
○総評
・つ、疲れた……! 先週とは逆に見どころが多すぎて疲れた
 └ココチヨイつかれ?
  └どうですかねー
・この作品は群像劇というより、視差劇というべきかね?
 └なんだそれ
  └それぞれの関わりはうすいが、さまざまな視点のキャラクターを
   同列に配することで、視聴者が登場人物のだれかには感情移入できる
   そういう物語構造になっているといえるんではないだろうか
   └人間関係は基本フォーマットからあまり動かさず
    ゆらぎでドラマを起こす作風の脚本家だし、ありえますね
    └終盤で話まとめるとき、たいへんそうだな

●次回予告
 罪なきものが死んでいく……それも計画の一部というなら
 ガンダムに科せられた罪の、なんと大きなことか
 次回『無差別報復』
 刹那、運命のひとと出逢う

 ・つぎ、かなり楽しみですねえ! この状況すらも予測しているであろう
  ソレスタルビーイング、視えない敵とどう戦うか!
  └けっこうカイートコロにテガトドクつくりになってるよねー
   └視聴者の『こうなったらどうするんだ?』ってつっこみを
    想定して話を組みたててるスタッフの暗喩でもあるのかな?
    └そりゃ考えすぎだぜ……
 ・ついに王女と遭遇。思ったよりコンタクトが早かったね
  └シンとステラも見習うべきだった
   └それはいいから! いやしかしこれで話が進むな
    今後王女のためにさらに刹那の命令違反が増えそう
    └ティエリアもロックオンも気苦労が絶えないな



・さて、見えざるテロリストに対しガンダムマイスターたちが採った方法とは?
『ば、ばかな、われわれが壊すはずだった施設が消滅している!?』
『めぼしい施設はすでにガンダムがすべて破壊した』
『お、おのれー、破壊すべき対象がなくなればテロのしようがない
 そこに気づくとは、ソレスタルビーイング……おそろしいやつらだ』
『これにて紛争解決!!(飛んで帰るガンダムたち)』
(ギャロギャロギャロロロぜっつっぼおはっあまいわなー)
 とかそういう展開じゃないといいなあと思っていました
 └あーよかったよなーはずれてー
  └なんです、そのぞんざいな反応は!




「『これは悪ではない。われわれはひとびとの代弁者であり
  武力で世界を抑えつけるものたちに反抗する正義の使徒である』」
 国際テロネットワークによるソレスタルビーイングへの活動停止要求
 これに応じなければ今後も無差別テロをつづけていくというのだ
「やってくれるよ、まったく!」
 さすがのガンダムマイスターたちもこれには(1名を除いて)キレた
 あのロックオンすらハロの相手をする気にすらなれず
 そればかりか、いつものあのセリフを口にする余裕さえ
「狙い撃つ……狙い撃つぜ……!」
 あ、これは言うみたいでした

 ♪マムリターマゥエーィ マィラファテディッフォーヨッペーンヌ

○8.無差別報復
 今回もみんなの世界情勢に対する説明や感想から開始する
 というかマイスターもトレミーのクルーもそれ以外することがないのだ
 しかたないからカムフラージュで女性陣は水着に着替えてバカンス
「ほんとうにしかたなくやむをえずなんだからね!
 あーそれにしても暑いわねえ。冷えたビールとかないのお?」
 スメラギさんすげえな

 そんなとき、まじめに仕事していたリューミン……の付き人、紅龍ホンロン
 情報を収集しているさなかにも、人革連の領内で新たなテロが発生した
「いやなものね……待つしかないということは」
 暗にロンくんをせっついたリューミンだが
(そんなこと言われてもなあ)
 かれとしてもエージェントから情報が入ってこなくてはどうにもならなかった
 隠密を旨とするソレスタルビーイング、こういうときは地道にやるしかないのだ

 テロ組織は複数の拠点を転々としながら活動を行っていると推測される
「キュリオス、目標ポイントへ飛翔する」
「ヴァーチェ、ティエリア・アーデ。いきます」
「エクシア、刹那・F・セイエイ、目標へ向かう」
「デュナメス! ロックオン・ストラトス、出撃する!」
 各地で待機し、つぎにどこでテロが発生しても
 現地に急行できるよう備えておくのだ
 たった4機で世界じゅうカバーできるのかどうかはともかくとして

 人革連ではセルゲイが出番をほしがっていた
「今回の件は、中佐がかかわるようなことではないと思いますが」
「多発テロの原因はソレスタルビーイングだ
 となればやつらがこの事件に絡んでくる可能性もある──
 そういうことだ。わかったかい?」
「中佐はいつもそんなしたり顔で、なにか悩みとかはないんですか」
「あるともさ」
 ソーマの素朴な質問に、頭を軽く触りながらセルゲイはため息をついた

 ユニオンでもグラハム中尉が出番をほしがっていた
「わたしはガマン弱く、おちつきのない男なのさ
 そして少年が大好物。おかしなセリフまわしを好んで用い
 気づけばすっかり周囲からなまあたたかい目で見守られている始末だ
 しかも姑息なマネをする輩が大のきらいときている……
 ナンセンスだが、動かずにはいられない」
「お、おともしますよ! 中尉!」
 ややたじろぎがちな部下とフラッグでパトロール中だったが
 今回の出番はこれだけに終わった

 スコットランドでは英外務省との会談を延期されたマリナ王女が
 ホテルで足留めをくらっていた
「旅費だってただじゃないのに……
 それもこれもぜんぶソレスタルビーイング……!」
「休暇だと思って楽しみなさいな」
 本国のシーリンにきょうもいじめられるマリナさんだった
(はあ、もういやこの女。ほかの話し相手がほしい)
 その切実な思いが、のちにとんでもない事態を招くことになった

 ところでルイスさんがスペインに連れ戻されそうになったらしい
 がんばれサジくん男だろ。まあ本人帰る気なさそうですが
 そして絹江さんがやっと仕事を終えて帰宅した
「モラリア大規模戦闘に、同時多発テロ……各国首脳陣の公式声明……
 世界じゅうで起こっているソレスタルビーイングの排斥デモ!
 社員総出で取材しても、しきれないって」
 働きマンが5人はいないとムリムリ、あたしに男スイッチなんてないのに
 そうこぼしながらソファにダウンした姉に対して
 サジは戦争が起こっているという実感を、このまえのバス爆発テロで
 やっとはじめて得たことを述懐する
「とうさんたち生きてたら、どう思うだろ」
「きっと悲しむわ。サジのように」

「いつまでかかるんだか」「焦れるぜ……!」
 各地で待機中のガンダム。暴れるのは好きだがおとなしく待つのは苦手
 それがソレスタルビーイング、そしてかれらはガンダムマイスターだ
 われらが刹那くんはサーシェスのもとで神に殉じていた日々を思い返していた
 だがかれの回想はセンサーがもたらした情報によって中断された
「熱源反応! やはりテロか……」
 リューミンからも連絡。現場付近に不審者を発見したとのこと
 刹那は偽装レンタタクシーバイク(たぶん本来は無人走行なのだろう)で
 現場に急行した。さっそくリューミンの続報
「不審者はクルマに乗って逃走。茶色いクーペです」
 まさにその瞬間、特徴の一致するクルマが走り去っていく
 いやそれヘン、いま逃げるまでなにしてたんだよ、と思いながら追いかける刹那
 そしてかれとすれちがったリムジンこそ
 テロからの避難のため車上のひととなったマリナ王女そのひとのものであった
「あ……!?」
 かれの姿を見てふりかえるマリナをよそに、刹那は拳銃を抜く
「目標を確保する」
(駆逐なら得意なんだけどなあ)
 だが刹那の放った弾丸は茶色のクルマの表面ではじかれてしまった
 ちっくしょーただのクルマじゃねえぞ!
 せめてナンバープレートに発信機を撃ちこんだりすればかっこうもついたけど
 ぜんぜんまにあいませんでした。刹那いいとこなし
 おまけに『きさま、なにをしようとしていた!』と警察に呼び止められる始末
「……べつに」
 おちつきはらって見えたが内心では困りはてていた
(しまった! 偽造IDコクピットに忘れてきた……心が戦場だから)
 刹那本格的にいいとこなし
 ちくしょうちくしょうガンダムさえあればこんな警官なんてひとひねりなのに
 とかホールドアップ状態の刹那が思っていると、
「失礼。この少年はわれわれの連れなんですが」
 なんとマリナ王女のリムジンがわざわざひきかえしてきたのだ
 はたしてかのじょの真意は?
 後部座席のウィンドウを下げ、ほほえみかけながらマリナは言った
「CM☆」



「よけいなことをしたかしら」
「……いや」
 CMが終わり、避難先の豪華ホテルの庭に移動していたふたり
 マリナ王女はかれの特徴ある衣装から、同郷と思いこんだらしかった
「アザディスタンの出身でしょ?」
「ちがう。クルジスだ」
 クルジスと聞き、狼狽するマリナ
「……! そ、そうなの。わたし、なんて言ったらいいか……
 あ、自己紹介がまだだったわね。わたし、マリナ・イスマイール」
「カマル・マジリフ」
 偽名の偽名を名乗った刹那だが
(ていうか任務があるし帰ろう。みんなもおれの力を必要としているはずだ
 おれはガンダムマイスターだから。むしろおれがガンダムだから)
「待って! もうすこしだけグチらせて!」
 立ち去ろうとした刹那をひきとめるマリナ

「あの役立たずのかわりに実行犯のひとりを確保しました!」
 犯人はリューミンの手のものにとりおさえられていた
 とりにがした刹那完璧にいいとこなし
「お嬢さま。あのドジが逃がした実行犯の生体IDバイオメトリクスから
 国際テロネットワークを特定しました
 欧州を中心に活動する自然回顧主義組織、ラ・イデンラと断定!」
「各活動拠点の割りだしを急がせなさい!
 あの使えない子みたいに失敗したら許さないから」
(はあ。おれもガンダムマイスターのほうがよかったよ……)
 紅龍の心境、推して知るべし

 マリナさんは『カマル』へ前置きとして自国の事情を話して聞かせていた
 自国が太陽光発電の恩恵を得るために、じぶんが東奔西走していること
 だが国内ではその是非をめぐって改革派と保守派が争っていること
 内紛を止めなければ『かれら』がやってくること
 そして本題、そんな状況でがんばっているわたしを
 ことあるごとにいじめるメガネがいるのよ、ちょっと聞いてよカマルくん──
 だが本題に入るまえに、カマルくんは『かれら』というところに反応した

「ソレスタルビーイング……」

「え? あ、そうね。狂信者の集団よ。武力で戦争を止めるだなんて
 かれらはじぶんたちのことを神だとでも思っているのかしら」
「……戦争が起これば、ひとは死ぬ」
「! 介入のしかたが一方的すぎるって言ってるの!」
 マリナはだんだんイライラしはじめた
 こんな話どうでもいいから早くメガネへの悪口を飛ばしたいのだ
「平和的解決も模索せずに、暴力という圧力でひとを縛っている
 それは、おかしなことよ」
「話してるあいだにひとは死ぬ……クルジスを滅ぼしたのは、アザディスタンだ」
「……! たしかにそうよ
 でも、ふたつの国は、さいごまで平和的解決をしようと──」
「そのあいだにひとは死んだ!」
 錦の御旗のように『死』という事実を振りかざす『カマル』
 そしてなにかに気づいたように、マリナは確認する
「……まさか! 6年もまえよ!? あなたはまだ若くて……戦っていたの?」
「いまでも戦っている」
 カマルくんは言った
「戦っている」
 カマルくんはなぜか2回言った
「!!」
 マリナはとうとうあとずさった
「……あなた、保守派の……! まさか、わたしを殺しに……!?」

(なんだと?)
 刹那は、顔には出ないがポカンとしていた
『……あなた、保守派の……! まさか、わたしを殺しに……!?』
 てっきりこいつはじぶんをガンダムマイスターと知って
 ひきとめたのだと思い、出かたを待っていたのだが
 なんのことはない、このお姫さまはなにも気がついていなかったのだ
(なんて時間のムダだったんだ
 こうしているあいだにも凶悪な犯人は逃げつづけているのに
 やつを捕まえられるのは、おそらくおれだけだというのに)
 見当ちがいのことを思いながら、思わず刹那は怒りのあまり告げた
「あんたを殺しても、なにも変わらない。世界も変わらない」
「カマルくん……」

「ちがう──
 おれのコードネームは、刹那・F・セイエイ
 ソレスタルビーイングのガンダムマイスターだ」

 いっ
 ちゃっ
 たああああああああ!?


「……紛争がつづくようなら、いずれアザディスタンにも向かう」
 いいなーたしかに警告したからなー忘れるなよー
 絶句しているマリナにそう言いわたし、刹那はきびすを返す
(……ちょっとだけ、しゃべりすぎちゃったかな……)
 なんつうか刹那、この、もお、ばか

 そしてチャイナズは各国諜報機関からの情報リークにより
 とうとうラ・イデンラの最新拠点をつかんだ
「世界が動けと言っているんだわ、わたくしたちに!」

 そして満を持してガンダムたちに出撃命令がくだされる
 一斉攻撃で同時にたたきつぶすという作戦だった

「あとはマイスターズにまかせて、ビーチに行きましょ
 作戦終了後に、あたしたち宇宙に戻るんだけど?」
「あ! 行きます行きます!」
 あんたら作戦のときより真剣ですよねえ!?
 てなわけで戦いのまえにちょっとだけサービスカット
「よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む
 これもまたソレスタルビーイングの理念よ」
 さいですか。くれぐれも月をふっとばしたりしないでくださいね

「ヴァーチェ、目標を完全破壊。ミッション・コンプリート」
 はや!
「容赦しねえ。おまえらに慈悲なんかくれてやるか!」
 黒いサザンクロスを刻みかねないほどのテンションで
 いつもはできるだけ手足を落とすところ、敵MSの急所を狙うロックオン
「きょうのおれは……容赦ねえぞ!」
 そう、オリュンポスではテロリストに人権はないのだ

 そして刹那のエクシアは艦船を撃沈にかかるが
 艦内からにょっきり生えてきたツメに足をつかまれた
「モビルアーマー!? 旧式とはいえ、こんなものまで」
 GNソードで腕を斬りおとすが、そこを魚雷が襲ってくる
 たまらず防御体勢をとるエクシア
「やったか!?」
 だからやったかって言っちゃだめだって何回言わせるのか
 案の定、海底へ沈んでいったのはシールドだけだった
 2本のビームダガーを突き立て、さらに2本のビームサーベルでとどめをさす
 けっきょくは圧勝。ガンダムエクシア、水中での格闘能力も圧倒的だった

「ガンダム各機、目標を破壊しました」
「ふう。まったく、世界というのは」
 もうリューミンさんがソレスタルビーイングのボスにしか見えません

 旅客機(さすがにファーストクラスみたい)で帰国中のマリナは
 フィンランドとの会談をとりつけたシーリンのイヤミすら聞き流し
 あの少年のことを考えていた
『おれのコードネームは、刹那・F・セイエイ
 ソレスタルビーイングのガンダムマイスターだ』
「……まさかね」
 まさかねじゃねえだろ、と言わんばかりに旅客機のとなりに現れたMS
「おい、あの白いのは」
「ガンダムじゃないのか!?」
「かっこいー!!」
 帰途についていたエクシアだった
「……ガンダム」
 飛び去るエクシアの姿に、マリナはいったいなにを思ったのだろうか

8.無差別報復 Closed




○キャラクター
●刹那・F・セイエイ
「死の涯に、神はいない」
・今回は『家族をアスハに殺された!』級のやつあたりっぷりでしたね
 └あのようすじゃ、やっぱりそのうち王女に感化されていきそうだな
●ロックオン・ストラトス、ハロ
「そんなもの……狙い撃つだけだ!」
「フェルト、マタナ! フェルト、マタナ!」
・ロックオンの過去がちらりと出たが
 これでティエリア以外の全員が紛争の被害者という可能性が出てきた
 └アレルヤはただの事故なのか、戦争のとばっちりなのかまだわかんないよ
  わかんなくてもいいけどね
・にしても、今回ですら影うすかったなあ
 └『強がってんだよ……』とか、地味に他人への目配りがきいてたぐらいですね
●アレルヤ・ハプティズム
「はあ……神経が太いというか、なんというか……」
・サバイバル・パックがどう見てもウィダーインゼリー……
 └ほかにもっといじるとこねえのか
●ティエリア・アーデ
「実行部隊であるわれわれが、組織の全貌を知る必要はない」
・さすがに今回起こったことをぜんぶ知ったらためらわず刹那を撃ちますね
 └そして先週のうちに撃っとかなかったことを死ぬほど後悔するだろうね
●マリナ・イスマイール、シーリン・バフティヤール
「そんな……! 笑えない冗談だわ」
「あなたの旅は、これがさいしょでさいごかもしれないわね」
・さあ、とんちんかんカップル誕生の予感がしてきましたよ
・造形的には、リリーナとカガリを足して割って天然お姉さんにした感じか?
 └魅力があるのかないのかさっぱりわからんな、それ
・ほんとえらそうだな、そろいもそろってこのアニメのメガネは!
 └かのじょのセリフってけっこうマリナの行動に影響与えてそうだ、じっさい
●グラハム・エーカー
「その忠義に感謝する!」
・あ。おれコーラサワーよりこいつの出番のほうが楽しみになってる
 └しっかりしてー!?
●セルゲイ・スミルノフ、ソーマ・ピーリス
・うわ! 本文でセリフぜんぶ書かれてるよ!
 └この作品、準レギュラーまでは頻繁に出てきてちょっとしゃべるね
  └ほんとにちょこっとずつですが……
●王留美、紅龍
「用事があるので、お世話の必要はなくてよ」
・執事とメイド軍団!
 └さすが華僑セレブ
・情報伝達が仕事だけに、今回は出番が多かったもよう
●スメラギ・李・ノリエガ、おやっさん(イアン・ヴァスティ)
「いいように使われただけです」
「だが、おおいなる一歩でもある」
・水着姿を見逃すまいとするおやっさんが涙ぐましかったぞ
●クリスティナ・シエラ、フェルト・グレイス
「……ちょっと、趣味が入ってるかも」
「ハロ……」
・今週やたら目立っていたフェルトですが
 いずれだれかとドラマとかあるのか、ただの萌え描写か!?
 └うーん後者っぽくてなんとも
●プトレマイオスクルー男子
「うちらの風あたり、まーた強くなっちゃうっすね」
「地上のやつらにまかせるさ」
・顔に傷のあるほう、すごい強そう
 └白兵戦になっても安心だな
●沙慈・クロスロード、絹江・クロスロード、ルイス・ハレヴィ
「どだいムリなんだよ、世界から戦争をなくすなんて……」
「ムチャな目的の裏にはなにかがある
 ソレスタルビーイングがなしとげたいと思う、ほんとうの目的が」
・今回も視聴者の思ってることを両面から代弁してくれた姉弟
 └それはさておき、ルイスはお嬢さまなりに独立心があるようで
○メカニック
●ガンダムエクシア
・迷彩皮膜とかしれっとまた超技術を……
 └なるほど、これで隠密性に関するつっこみはさらに減るな
●ガンダムデュナメス、ガンダムキュリオス
・今回はあえて言うこともないですか
 └つぎは総力戦になりそうだ。新しいギミックに期待しようじゃないか
●ガンダムヴァーチェ
・目標完全破壊早すぎるよ!
 └基地を根こそぎふっとばすようなミッションはお手のものだね
●モビルアーマー
・これのデザイニャーって、やっとこフェチ?
 └記念すべき初登場MAに対する感想がそれですか!?
●ヘリオン
・絵に描いたようにザコでしたね
 └ティエレンとちがってエースが乗らないからそういう印象しかねえな
●バイク型レンタタクシー
・あの勢いで走ってたからてっきりフェードインみたいな感じで
 空中でバイクを乗り捨ててコクピットに飛びこむのかと……
 └ふつうに降りたときの『あれ?』っていう気分ったらなかったな
○総評
・もう今回は刹那が持っていきっぱなしだったね!
 └内面描写のしがいがあったようで、満足してました
  └まちがった楽しみかたを……

●次回予告
 ソレスタルビーイングはやりすぎた!
 圧倒的物量で行われる殲滅作戦、そこに隠された真の目的とは?
 次回『大国の威信』
 万能など、ありえない

 ・え、汎用と称する万能ってガンダムの十八番じゃないんですか
  └おまえ今週ずいぶんと口わりいなあ
   ……でも今回やりすぎたのって刹那だよな、むしろ



・また更新が遅れてるな
 └いやーほんと今回は遊びようがなかったようで……
  けどアニメのほうはおもしろかったですよ!
  └急に弱くなるガンダムとか急に無能になるスメラギさんがか
   └ええまあ、そこはご愛嬌




 そこは雨の降りしきる墓地だった
 だれかの命日なのだろう、傘を差し、花束を手にやってきたロックオン
「……ん? いったいだれが?」
 先に捧げられていた花束を見て、ロックオンはつぶやく
「もしかして……あのひとが?」
 その姿を木陰から見守っていた男は、おそらく『あのひと』と呼ばれた当人
 われらがロックオン・ストラトスそのひとであった、ってあれえええええ!?
 というわけで先に出てきたほうは双子の兄弟かなんかだろうか

 ♪ジャンジャジャーン ジャンジャンジャーンジャジャンー

 最近条件反射でこの前奏がかかっただけでも笑える身体になってきた

○9.大国の威信

 西暦2307年
 ソレスタルビーイングが武力介入を開始してから
 4箇月のときが過ぎようとしていた
 かれらの介入行動回数は60を超え
 ひとびとは好むと好まざるとに関わらずかれらの存在を受け容れていく
 ソレスタルビーイングを否定するもの、肯定するもの
 どちらの気持ちも戦争を否定するという意味では一致していた
 だれも、争いを求めたりはしないのだ
 地球にあるみっつの国家群のうち、ユニオンとAEUは同盟国領内での
 紛争事変のみ、ソレスタルビーイングに対して防衛行動を行うと発表
 しかし、モラリア紛争以来、大規模戦闘はいちども行われていない
 これを可能にしたのは、モビルスーツ・ガンダムの卓越した戦闘能力にある
 世界中で行われている紛争は縮小をつづけていたが
 武力による抑圧に対する反発は消えることはない
 そしていま、唯一かれらに対決姿勢を示した人類革新連盟で
 ある匿秘作戦が開始されようとしていた……


 コロニー高軌道ステーションにて
 セルゲイ・スミルノフは人革連の精鋭、特務部隊『超武』へ檄を飛ばしていた
 今回の任務は世界を騒がす武装組織の壊滅。気合も入ろうというものだ
 そのなかにはあのソーマ・ピーリス少尉の姿もあった
 ほかの連中も、なるほどいわれてみれば精鋭ぞろいっぽい顔が並んでいる

 さて、武装組織のほうのセイエイくん(精鋭ちがい)はエクシアを
 プトレマイオスに着艦させていた
 ロックオンも帰ってきたがハロの兄弟が出てきてびっくりしました
 ここはラクス・クライン邸か?
「感動の対面だな」
 ロックオンも大量のハロをほほえましやかに見守っているのだった

 ガンダムたちは機体オーバーホールのためいちど全機帰還したのだった
 いま襲われたら……と懸念を示すアレルヤに対し
 スメラギさんは『とくに対策立ててないけどまあなんとかなるんじゃない』
 的な態度。プトレマイオスはジャミングで護られてるしね

「通信子機、全体分離開始! 双方向通信、正常です」
「これでわが軍の静止衛星軌道領域を、80%網羅したことになります」
 さて人革連では作戦が着々と進行中
 かれらが目をつけたのはまさにガンダムのジャミングを利用することだった
 数十万もの小型通信装置を空間上にばらまき、通信のとだえたエリアがあれば
 そこにガンダムがいるというわけだ。あったまいーい
 物量を誇る人革連としても破格の大盤ぶるまいである
「うまくいくでしょうか?」
「そうでなくては困るよ、ミン副官」
 これで成果があがらなかったらどれくらい減俸されるか想像もつかない
 そんなことになればセルゲイは髪の奥の髪がさらに減ってしまう
「奥の髪などない」

 日本ではルイスをむかえにスペインから母親(例によって美人)がやってきた
 ルイスがサジを紹介すると、母は
「そーお。娘がお世話になっております」
 にっこり笑ってごあいさつ。しかしすぐ冷ややかな表情に変化した
「でももうけっこうですので」
 大人って怖いわ……
 連れて帰ろうとする母に抵抗するルイス
「なんとか言ってよサジ!? 恋人が連れてかれちゃうのよ!?」
「恋人!?」
「誤解です、おかあさん!!」
「おかあさん!?」
 お約束な会話がくりひろげられていた

 JNN本社では絹江さんがやる気になっていた
 イオリア・シュヘンベルグの調査報道をやりたいと上申する絹江さん
 難色を示していた上司も、その熱意にしぶしぶ
『1箇月で1時間番組ぶんのネタを集められるなら』と承諾するのだった

 アザディスタン王国ではマリナ王女が
 援助要請を受けてやってくる国連の視察団を迎えに空港にきていた
 国連大使との会談がまとまれば
 アザディスタンもいよいよ太陽光発電の恩恵にあずかれることとなる
 ていうかいちおう国連まだあったんだ
「国連大使のアレハンドロ・コーナーです」
 あれ、このひとっていつもリューミンさんと交代々々にソレスタルビーイングの
 説明をするひとじゃないか。国連のひとだったとは
「感謝いたします」
 王女と会話するアレハンドロさんをメガネことシーリンはいぶかしげに見ていた
 加盟国から分担金の支払いがなく、いまや有名無実となっている国連に
 見返りの期待できないアザディスタンへ援助をするほどの余裕はないはず
(あの男……なにを考えている……?)

 トレミー(プトレマイオス)ではガンダムマイスターたちが休んでいるので
 なにやらいつもよりのどかなムードだった
 男子クルーがクリスティナに親切にしたらものすごい予防線張られたり
 ロックオンが窓際で泣いてるフェルトとでくわして相談に乗ったり
 食事に行ったクリスティナが同席したのがよりにもよって
 刹那とティエリア(ふたりとも、ひとことも発しない)だったり
 といっても仕事はしてますよ、ということでGNドライブもチャージし
 レーダーに対する隠蔽工作も完璧。きょうも平和だ

「中佐に報告!」
 だがその完璧な隠蔽によりとうとう人革連はトレミーを発見してしまった
「まさか、これほど近くにいたとは……」
「MS隊、緊急発進!」
 そのなかにはソーマくんのティエレン・タオツーの姿もあった
 さあたいへんだソレスタルビーイング

 ロックオンはフェルトの話を聞いていた
 きょうはフェルトの両親の命日だったという
 ふたりとも第2世代のガンダムマイスターなのだそうだ
「そうかい……おれは、きみの両親のおかげで戦えてるんだな」
 しかしその死の真相はソレスタルビーイングの守秘義務によって
 家族にすら明かされない。ロックオンはその境遇に同情した
「ニールだ」
「え?」
「おれの名前だ。ニール・ディランディ
 出身はアイルランド、両親はテロで殺された」
「どうして……?」
「教えてもらってばかりじゃ、不公平だと思ってね」
「やさしいね……」
「女性限定でな」
 いいふんいきになってた(でも24歳と14歳)ふたりのところに
「ロックオン、あ!──失礼」
 アレルヤくんナイス。今回はお約束強化週間だろうか

「あんな状態じゃ味なんかわかんないって」
 ぶつくさ言いながら戻ってきたクリスティナがモニターを確認すると
 人革連のばらまいた通信装置が映っていた
「敵にこっちの位置が探知されてるのよ!!」

 プトレマイオスはにわかに騒然となった
 おおあわてで戻ってきたブリッジクルー
 スメラギも移動しながらすでに状況を推測していた
「こんな物量作戦が行えるのは、おそらく人革……!」
 エクシアの整備は終わっているが、デュナメスのほうは
 脚のジェネレーターが使用できないため応急処置で
 左脚のかわりになんか義足というか棒がついている
「撃てればいいさ!」とロックオンとハロはハロ兄弟に見送られ搭乗する
 作戦としては、キュリオス、ヴァーチェを先行させ
 電磁波によって敵の通信装置を無力化、五分の条件にできる
 オービタル・リングの発電衛星に向かう方針だ

 通信遮断ポイントからふたつの新しい遮断ポイントが生まれ
 それを見たセルゲイはさいしょのポイントを輸送艦であると推測する
「捕捉しだい、作戦行動に入れ!」

 4隻の人革連艦のうち2隻は、陽動に出たキュリオス、ヴァーチェのもとに
 ふつうに向かっていった
「……やられた!」
 スメラギさんのプランでは、敵があからさまな陽動に応じず
 4隻いっせいにトレミーに向かってくるところを
 反転したキュリオス、ヴァーチェとトレミーで挟撃するつもりだったのだ
「敵は、こっちの陽動を陽動で応えたのよ
 おそらく攻撃に向かった敵輸送艦に搭載されたMSはすでに発進ずみ
 逆にアレルヤとティエリアがいまごろ
 輸送艦の迎撃に時間をとられているはず」
 ふたりが戻ってくるまでの6分間、輸送艦4隻ぶんのMSによる波状攻撃に
 耐えなくてはならないことになる
「ミス・スメラギがそう予測する根拠は?」
「18年まえ、第4次太陽光紛争時に、これとおなじ作戦が使われたわ
 人革連の作戦指揮官は、『ロシアの荒熊』の異名をとる──」

「本隊の作戦開始時間だ。命をムダにするなよ!」
 セルゲイ・スミルノフにはそんな異名があったらしい

(ロシアのあらいぐま……?)
(か、かわいいかも)
(ていうかそこまで知ってるなら予測に織りこもうよ予報士……)
 ブリッジを微妙な空気が支配した

 さて、プトレマイオスにはいっさいの武装がないらしい
 ブライトさんが乗ったらさぞかし物足りなく感じるにちがいない
「さあ、そろそろ敵さんのお出ましよ! 360秒間、耐えてみせて!」
 こういうときの360秒ってとてつもなく長く感じそうだ
 輸送艦出現
「デュナメス、砲狙撃戦開始!」
「いけよ!!」
 だが命中しなかった
「ちっ! 機体重量の変化で照準がずれてやがる!」
 あわてて修正するロックオン
 いやいつものセリフ言わなかったからだと思うよ
 さっそくミサイルがバスバス飛んできた
「狙い撃つぜ!」
 ほらね、こんどは命中した
「しまった!?」
 だが最近株落としっぱなしの刹那くんは見事にとり逃がした
「GNフィールド展開!」
 ミサイルは防いだが
「この速度……無人艦による特攻だわ!?」
「と、特攻って……そんな……いやあっ!!」
 クリスティナが叫ぶ
「やらせるかっ!!」
 ロックオン兄さんが腰部GNミサイル(たぶん)を発射し特攻艦は
 トレミーの目のまえで爆発
「GNフィールド、再展開!」
「いや……いや……!」
 だが戦闘経験のないクリスティナは恐怖のあまり行動不能に陥っていた
 フィールドを展開できず、破片が艦体を直接叩き、アラームが鳴り響く
「助けてアレルヤ……あたし、死にたくない!!」
 アレルヤですか
「クリスティナ・シエラ!」
 スメラギの叱声も恐慌状態のクリスには届かない。そんなとき
「生き残るっ!!」
 それを叫んだのはフェルトだった
「全員、生き残るの……!」

 撃沈された敵艦のむこうにはMSの大部隊がいた
 いよいよ本格的な攻撃が開始されるのだ
 だがやつらは周囲から遠距離攻撃をかけてくるだけだ
「エクシア、前に出れば防御がうすくなるので目標を駆逐できず二の足を踏む!」
 いや解説しなくていいよ刹那
「敵さん、及び腰だ!」
「このていどの攻撃なら、GNフィールドで対応できる!」
 膠着する戦況に対して、スメラギだけが敵の目的を悟った
(MSの艦船攻撃のセオリーからはずれた遠距離攻撃……
 そう、そういうことだったの……!
 人革連、いえ、セルゲイ・スミルノフの今回の作戦目的はトレミーじゃない
 ガンダムの鹵獲!)
「わたしの予測がはずれたというの? もうまちがわないと決めたのに!」
 だが、決めればまちがわないなら人生苦労はないのだ
 スメラギの決意をあざ笑うように
 キュリオス、ヴァーチェの帰還予測時間を示すタイマーは
 無情にもすでに1分近くのタイムオーバーを刻んでいた

「キュリオス、うっかり機雷原に誘いこまれる!」
 アレルヤくんがドジっているところに、いよいよ襲いかかってくるピンクロボ

「……! ぐっ、なんだ、この頭を刺すような痛みは……
 お、おなじだ……あのときとおなじ痛み……!!
 なにが……いったいなにが……はっ! あの機体は……
 知っている……知っているぞ!!」

 さあ、ソーマくんVSアレルヤ&ハレルヤ、いよいよ直接激突か

9.大国の威信 Closed




○キャラクター
●刹那・F・セイエイ
「整備を手伝う」
・ほんとうにエクシアは大事らしいなこいつ
●ロックオン・ストラトス、ハロ(複数)
「両親の遺志を継いだんだな──きみは強い。強い女の子だ」
「ガンバレ! ガンバレ!」
・今週の主役その1
・本名なんてそんなつまらないものを明かしてはだめだ
 いつまでもぼくたちのロックオンでいてほしかった
 └おまえのこだわりなんぞ知るかあっ
●フェルト・グレイス
「あなたの名前……?」
・今週の主役その2
・ていうか泣きたくなったから気分が悪いと言ってサボリに行ったのか
 └アレルヤが入ってきたとき不機嫌そうな顔をしていたのが印象的でした
●スメラギ・李・ノリエガ
「神を怨むわ」
・今週の主役その3
 └今回ほどミスが多いならこれまでもうまくいく道理がなかったような……
●アレルヤ・ハプティズム
「……戦術予報士のセリフですか、それ?」
・なんだか、スメラギさんにつっこみ入れる担当になってきたな
・ロックオンとフェルトにでくわしたときの反応が楽しかった
 └赤くなってるしね
●ティエリア・アーデ
「手間をかけてくれる……!」
・手間を『かけさせてくれる』じゃねえのこれ?
 └手間をかけた足留めをしてくる、という意味ともとれる
●マリナ・イスマイール、シーリン・バフティヤール
・よかったね王女! 諸国漫遊の旅はムダではなかった!
●グラハム・エーカー、王留美
・あ、あれ?
 └まあ毎週出なくちゃいけないということもないし、今週は人革連が主役だし
  └なっとくイカーンちょっとでもダスベキー
●セルゲイ・スミルノフ、ソーマ・ピーリス
「少尉にとって、これが初めての実戦になる
 このまえのようなことはごめんこうむる」
「承知しています、中佐」
・いや当人が気をつけてもどうにもならないんじゃないのそれ
 └スーツに処置したって言ってたしだいじょぶじゃないかなあ
●イアン・ヴァスティ
「部屋に戻って休んでいろ。ひとの仕事を取るんじゃない」
・なかなかいい味のメカニックになってきたような気がする
 └あんまりメカニックらしく見えないけどな
  なんかただのゴルフ好きのおやじみたいな容姿だ
●クリスティナ・シエラ
「きまずい……!」
・まったくおなじことを同時に思った視聴者も多いことだろう
 └あんたもか
・アレルヤに気があるのかな。それともべつの名前の聴きまちがいか
 └あのなかでは一見アレルヤがいちばんまともそうだしな……
  └ロックオンは?
   └好みじゃないのよねー、とか
●プトレマイオスクルー男子の弱そうなほう
「哀しい……」
・哀しすぎる……!
●沙慈・クロスロード、ルイス・ハレヴィ
「いつの間に!?」
「男の子ならはっきりして!!」
・彼氏彼女とは呼べても恋人と呼ぶのは軽くためらわれるのが日本人の悲しさよ
 └なんでなんだろうね、あれ
●絹江・クロスロード
・いよいよイオリアさんの正体に迫るのかジャーナリスト
 └探ってる過程でリューミンあたりとからみそうだねえ
○メカニック
●プトレマイオス
・武装ぜんぜんないってのも割り切った仕様だな……ガンダム以外戦力なしか
 └今回のことですこしは改造とかしそうですけど、どうなんでしょ
●ガンダム
・今回デュナメス以外いいとこひとつもなし
・出撃してもヴァーチェは影がうすい……次回は大活躍だ!
●ティエレン
・物量でどしどし攻めてくると思いきや、距離をとってジリジリ攻めてくるわけだ
●ハロ
・なんかハロ用ボディみたいなのが出てきましたね
 └ケロロ軍曹みたいだな。これきっと白兵戦では大活躍だぜ
  └いやな絵面だね……いやでもいいけど
○総評
・今週はアクションばかりだったのでこのコーナー的にはいじりづらくて
 苦労しましたが……まあおもしろかったからいいです!
 └ラストでかかった人革連のテーマらしいアジア風な曲がかっこいいね
  さすが川井憲次。サントラ欲しくなってきたな

●次回予告
 ワナにはまったソレスタルビーイング
 キュリオスはそのなかで覚醒をうながされ
 ヴァーチェが隠された能力をさらけだす
 次回『ガンダム鹵獲作戦』
 天使の羽が、空を舞う

 ・つぎはいよいよヴァーチェが脱衣だよ、しょくん
  └脱衣とかいうなや……つーか確定なのか?
   └やあまあ、みるからに増加装甲なデザインですからねえ



・さて今週もギリギリでお届けします
 どうも滞りがちですが、いまのところやめる気だけはさらさらないので
 今後ともよろしくおねがいいたします
 ├パロは減ってるけどね……減っててもいいけど
 └そんなことよりほかの更新もしようぜなあ


 経済特区東京ではハレヴィ母が食事に誘った娘の着物姿にご満悦
「とっても似合ってるわ!
 やっぱりママの見立ては正しかったようね……あら?」
「ど、どうも……」
 サジがとなりに現れたとたん、またしても態度急変である
「あなたを招待したおぼえはありませんけど?」
「ぼくは断ったんですけど」
「意志が弱いのね……ならはっきりと言ってさしあげましょう──
 おかえりなさい!!」
「えっあ、はい、ただいま、おかあさん!」
「そういう意味じゃねえええええだれがオカアサンジャアアアアア」
「え!? あれ!?」
「よ、よく言ったわ、サジ!」
「ムキーッギャピー!!」
「えーと……?」
 地上で平和な光景がくりひろげられているころ

「まちがいない……この敵は時間稼ぎをしている……!」
「ちっくしょお、持久戦かよ!」
「いえ、敵の目的はわたしたちじゃない! ガンダムを鹵獲する気だわ!」
「知っている……知っているぞ! ぼくはあの機体を知っている!!」
 宇宙ではプトレマイオス大ピンチの状況がつづいていた
 この対比はいったいなにを表現しているのだろうか

 ♪シズーミソーォーナー ンーミィイトゥー

○10.ガンダム鹵獲作戦

 西暦、2307年
 永続的なエネルギーを手に入れたいまでも
 人類は争いをやめることはできなかった
 そんな世界に対して、戦争根絶を目的とする私設武装組織
 ソレスタルビーイングが行動を開始する

 だが、それに反発する世界は、人類革新連盟軍特務部隊
『超武』による匿秘作戦を敢行
 司令官、セルゲイ・スミルノフの戦術に4機のガンダムは翻弄され
 反撃の糸口をつかめずにいた
 その戦火のなか、アレルヤ・ハプティズムのまえに
 ティエレン・タオツーを操る超兵壱号、ソーマ・ピーリスが現れる
 ふたりの出逢いは宇宙になにをもたらすのか……


 知っている知っているぞとかいいながら身もだえしているキュリオス
 GN粒子を出すのすら忘れている
「機体の変調か……それともワナか!?」
 さすがにセルゲイさん慎重だった
 捕獲用のカーボン・ネットにからめとられるキュリオス
 接近するソーマのタオツーに苦しむアレルヤの声が、通信でかれらにも届く
「来るな……来るな! こないでくれえー!!」
「……この声は!?」
 ステーションの重力ブロックを押したときに聴こえた、若い男の声だ
「だが、なぜ苦しむ……ピーリス少尉を拒んでいるのか」
 うんうんやっぱりもうすこしメリハリのある体型じゃなくちゃいやだよなあ、と
 一瞬同志を見つけた気になった中佐だったが、以前超人機関のおいしゃさんから
 聞いた話を思いだした。脳量子波の干渉を受ける可能性──
「もしや、ピーリス少尉と同類……?」
 ともあれ気絶したアレルヤを乗せたまま、キュリオスは虜囚の身となった

 プトレマイオスはあいかわらず敵に釘づけにされている
 エクシアは攻撃をよけられっぱなし、デュナメスは死角にまわられて狙い撃てず
 キュリオスとヴァーチェが帰ってくる気配はない
 スメラギさんは脳内反省会のつづきをしていた
「なんてうかつなの……! あたしは!」

 さて、4番艦内に拘束されたキュリオスですが
 あらゆる断層撮影を受けつけない。これもGN粒子の力なのか
 いつのまにかMS形態になっているのもGN粒子の力なのだろうか
「ピーリス少尉としてはもの足りぬ初陣となったな」
「わたしにそのような気持ちはありません
 作戦を完遂することが、わたしのすべてです
 ……って中佐、熱源が!」
「なにっ!?」
 あやういところで極太ビームをかわす2機。逃げ遅れた数機がまるごと蒸発した
「この攻撃は!? でかぶつか!!」
「ガンダムっ!」
 今回の主役、ヴァーチェである
「敵に鹵獲された!? なんという失態だ! 万死に値する!!」
 怒れるティエリアはGN粒子をシールドと化して全力運転
 敵艦めがけてキャノン砲をかまえる
「味方がいるのはわかっているはずだ、それでも撃つというのか」
「アレルヤ、ハプティズム
 きみも、ガンダムマイスターにふさわしい存在ではなかった!」
『きみも』──
 これはたんに刹那のほかにきみも、という意味か
 それとも処刑ははじめてのことではないというのか?
 だが輸送艦のまえに立ちはだかったMSがあった。ソーマのタオツーである
「速い! ティエレンとはちがう、新型か」
 ヴァーチェは砲撃をかけたが、なんということであろう、タオツーはかわした
 これまでコーラサワーにしかかわせなかったヴァーチェ必中の一撃を……
 コーラサワーにしか。ああ必中でもなかったや
「2度もよけた!? おやじにもよけられたことないのに!!」
 このスキにキュリオスを積んだ輸送艦を逃がすにはじゅうぶんな攻防であった
「たった1機でヴァーチェに対抗する気かっ!」
「ジャマはさせないっ!」
 大振りの攻撃を回避しつつ
 シールドを張ったヴァーチェを至近距離からの射撃でひるませるタオツー
 おおソーマくんはじめてかっこいいぞ
「調子に乗るなっ!!」
 とうとうヴァーチェの肩部キャノンが命中し、タオツーの右脚を奪った
「よくも……!」
 ソーマが感情をあらわにした
「あたしのタオちゃんがかかしになっちゃったじゃないかあ!!」

 じゃないかあーじゃないかーないかー
「そうだ……この声は……
 ああ……そうだ……あのときの……女の声だあ!!」
 カッターでハッチを切られる寸前、キュリオスが稼動した
 髪の分けめが逆になったアレルヤ
 すなわち第2の人格『ハレルヤ』が目覚めたのだ
 内部からの攻撃により、船が爆発する
 やはりただの輸送艦では、ガンダムを捕縛するには設備が弱すぎたのだ
「すべてはわたしの判断ミス!」
 いやセルゲイさんあんたはよくやっ……いやほんとだよ武器ぐらい奪っとけよ
「是が非でもあのデカブツは鹵獲する!」

「ヴェーダ……これは……!?」
 タオツーから感じる特殊な気配にティエリアがとまどっているところに
 ほかのティエレンも集まってきた
「なめられたものだっ!」
 だがヴァーチェの速射性の低い攻撃はまたしても回避されていく
「なにっ!?」
「発射までのタイムラグは承知している!」
 ワイヤーで四肢を封じられ、グルーで関節の自由を奪われるヴァーチェ
「これしきのことでえ!」
「やらせるかっ!」
 かまえたライフルを蹴りとばされる
「それでも!」
 肩のキャノンを撃とうとするが、これもティエレンに抑えつけられた
「だとしても!!」
 いよいよなりふりかまわなくなってきたティエリア
 ティエレン6機をひきずるヴァーチェの大出力にひるむセルゲイだが
「少尉! 首でも腕でもかまわん、奪いとれ!!」
 GNフィールド展開を封じられ、いよいよ万事休すか、そう思った瞬間
(……やられる!!)
 ティエリアの瞳に人工的な光が走り
 そしてモニターに『NADLEEH』の文字が現れた
 つぎの瞬間、ワイヤーをひきちぎるほどの勢いで装甲がはじけとび
 斬りかかっていたタオツーにも激突した
「うっ! ……そんな……!」
「装甲をパージしただと!?」
 とうとう現れたヴァーチェの真の姿
 それは、うってかわって女性的なフォルムの機体だった
 肩のキャノンを手で持ち
「ガンダムナドレ……目標を消滅させる!!」
 周囲のティエレン6機がいちどに吹きとばされていく
「現宙域より離脱!!」
「中佐!?」
「撤退だ!!」
 中佐はあのガンダムに対し、いいしれぬ脅威をおぼえていた
 とくに頭部からなびく赤いケーブルの束は、なにかに見えて
「……うらやましい!」
 ナドレもかれらを追う気にはなれないようだった
「なんという失態だ! こんな早期にナドレの機体をさらしてしまうなんて
 計画をゆがめてしまった!
 ヴェーダ……おれは……ぼくは……わたしはっ……!」
 ティエリア・アーデ。かれの、あの子の、かのじょの(?)謎はまだ深い

 プトレマイオスのほうの戦闘もようやく終息にさしかかっていた
 デュナメスとエクシアも奮戦をつづけ、周囲の敵を撃破していく
「ようやく7機!」
「これで……9機……!」
 そのとき、まばゆい白光が空域を照らしだした
「撤退信号か!?」
 退いていくティエレンたち
「ニゲタ! ニゲタ!」
「ふう……やっとこか……」
 助かった、と胸をなでおろすクルーにスメラギは
 キュリオスとヴァーチェの回収を命じる
「アレルヤ……ティエリア!」

 セルゲイ、ソーマ、ミンは痛恨の撤退行動中だった
「これほどの規模と人員を駆使して、1機すら鹵獲できんとは……!」
「見つけたぜ! ティエレンの高機動超兵仕様!
 ああまちがいねえ、さんざんぱらおれの脳量子波に干渉してきやがって!
 てめえは同類なんだろ! そうさ、おれとおなじ、身体をあちこち強化され
 脳をいじくりまわされてできたバケモノなんだよお!!」
 ハレルヤくんのじつに親切な説明おわり
 片足のタオツーで迎撃するソーマくん
 しかしアサルトライフルの命中弾を浴びる
「なに!? 遊んでるの!?」
「ほらさあ! 同類だからさあ、わかるんだよ!!」
 そのとき、セルゲイにミンから
「中佐……少尉とともに離脱してください。中佐と少尉の能力は
 超武に必要なものです。仇討ち、願います!!」
 ミン中尉すごい勢いで死を覚悟して向かっていった
「じゃますんなよ一般兵! 命あってのものだねだろうが!!」
 そして助けようとするタオツーを制止し、セルゲイは告げた
「離脱するぞ、少尉! 男の覚悟に、水を差すな……!」
「なんだ、仲間見捨てて行っちまうのか?
 やることが変わらねえよな、人革さんはよ!」
「いつか……いつかおまえたちは、報いを受けるときがくる
 われわれが築きあげてきた国を、秩序を乱した罰を!!」
「そんなたいそうなもんじゃねえだろお……
 ひとを改造して兵士にするような社会に、どんな秩序があるってんだ?
 そんでもって、女に逃げられて少々ご立腹だ
 だからさあ、ラクには殺さねえぞ!!」
 シールドが変形したクローと、先端のヒート剣がハッチを溶解させ、
 コクピットへジリジリと食いこんでいく
「なにっ……うっうああああ!!」
「どうよ、一方的な暴力になすすべもなく命をすり減らしてく気分は!?」
(やめろ……ハレルヤ! やめてくれ!)
「なに言ってんだよ、おまえができないからおれがやってやってんだろ?」
(やめるんだ!!)
「まったく、おまえにはかなわねえよ……なんてな!!」
 そしてキュリオスはミンのティエレンを破壊した
「あっはっはっはあ! 愉しいよなあ、アレルヤ、あれるやあああ!!」
 まあたしかになぶり殺しはやめたことはやめた
「中佐! ミン中尉が!」
「なにも言うな少尉……言うな!
 ガンダム……!」
 セルゲイはガンダムの力をあらためて思い知らされていたと同時に
 その行動の不可解さにとまどってもいたのだった
 キュリオスもナドレとおなじく、かれらを追うことはなかった
 パイロットがアレルヤに戻っていたからだ
「なぜだ……なぜなんだハレルヤ……どうしてそんなにひとを殺したがる……!
 それがぼくの本質だとでもいうのか……もしそうなら、ぼくは……
 ひとでなしだあっ!!」
 これで稀代の殺人者だったんじゃなかったのか
 まあ大義があるとないとじゃやっぱりちがうのだろうけど

 プトレマイオスは佇むナドレを発見
「そう……ナドレを使ってしまったのね、ティエリア……!」
「あれが、ナドレ……!」
「アレルヤ、聴こえる? アレルヤ……はっ」
 クリスはなにかに気づき、呼びかけるのをやめた
「泣いてる……?」
 スメラギも廊下に出て泣いていた
「たまらないのよ、こういうの!
 また、まちがえてしまった……ほんと、どうしようもないわね、わたし……!」

 さて、ここからはくつろぐリューミンさんとコーナーさんの
 時空を隔てたまとめコーナーです
 では王さんから
「なんという失態……
 イオリア・シュヘンベルグの求めた理想を、ガンダムは体現している
 なのに、どうしてマイスターたちは、こうも不完全なの?」
 おまえらが乗れよ
 ではコーさんどうぞ
「わたしは監視者であって実行者ではないよ
 わたしにできることは、かれらを見つめつづけるのみ
 たとえそれが、滅びの道だとしても……」
 さようか
「あとコーさんとか呼ばないでくれたまえ」
 すみませんでした

 おまけ
 帰還したロックオン兄さんがコクピットから出てこない
 頭を抱えて後悔の嵐にさいなまれていたからだ
「あああああああとうとう『狙い撃つ』って言うの忘れちまったあああああああ」

10.ガンダム鹵獲作戦 Closed




○キャラクター
○メカニック
・準備中
○総評
・今回は前回にひきつづきバトルまくりでしたが
 うってかわってネタの宝庫でしたね
 └でもなんつーかしゃー
  └ええ、なんでしょうね、なんか釈然としませんね
   └今回のハデな要素、どれも平成ガンダムが受けがちな批判によくある
   『ほかの作品でさんざんやってることをガンダムにあてはめただけ』
    ってのばっかりだったからじゃねえの?
    └アルカモーアルメリーアレルヤー
     └どういう活用形だよ

●次回予告
 ソーマ・ピーリスの存在が、アレルヤにあるミッションを決断させた
 それは過去への贖罪か
 次回『アレルヤ』
 血の洗礼。それは、神に叛きしものの祝福

 ・どうやら超人機関をぶっ壊そうとするようです。また独断専行でしょか
  └あのソーマくんの主治医っぽい
   頭にへんなのつけたおっさんがピンチだ



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